細胞集団中における細胞移動の分散

山尾 将隆 (0651131)


脊椎動物の発生過程において、神経冠細胞や始原生殖細胞に代表される数多くの 移動性の細胞が存在する。それらの細胞移動は、長い距離を正確に移動し、目的 地に辿り着くことが知られている。目的 地には、細胞を引き付ける誘引分子が存在し、移動細胞はその濃度勾配を検知し 目的地に辿り着くと考えられる。しかしながら遠く離れた場所においては、濃度 勾配は放射状ではなく、平行に一様な濃度勾配となり、移動細胞は方角しか知る ことが出来ず、正確な目的地の位置が分からない。加えて発生過程においては、 周りを他の揺らぐ細胞に囲まれながらの移動となり、非常にノイジーな環境の中 を移動している。このような状況下において、細胞はどのようにその高い移動精 度を保っているのであろうか?

本研究では、細胞の機能を司るシグナルカスケードの類は一切考慮せず、その物 理的特徴のみに注目して、上記のような系の解析やシミュレーションを行った。 それにより、周りを揺らぐ細胞に囲まれているという物理的特徴そのものが細胞 移動の分散を下げる効果を持つことが分かった。この結果から、周りの細胞がど のような機能を持っていれば細胞移動を容易にすることができるのかを調べるこ とができた。これより、未だその機能の不明なてんが多い数多くの分子に対して、 期待される機能は何なのかを議論することができるようになった。