患者個人の体型に適応可能な切開テンプレートの開発

村上 伸太郎 (0651126)


 ボリュームレンダリングによって可視化された像上で手術をシミュレートし、医学教育や手術計画、患者への説明に利用することが望まれている。これまでに像に対する変形や切開などの表現が可能となってきているが、臨床における実用の際、実測ボリュームデータからのモデル構築、シミュレーションの設定操作等が複雑で時間を要することが問題となる。また、患者個人のデータごとに毎回定義が必要で、セットアップに時間を要している。一方で、臓器の形状や弾性には個人差があるものの類似点が多く存在し、手術時におけるアプローチや手術手技は手術書などに見られるように一定の体系化がなされている。このような手術シミュレーションに共通の情報を事前にデータベースとして保持することで一連の作業や入力の複雑さを解消できる可能性がある。

 本発表では、術前シミュレーションにおける患者個人の体型・手術に適応可能な切開テンプレートの開発を目的とする。人体・臓器の形状や弾性に関する情報、手術シミュレーション、特に切開シミュレーションに要する初期条件等を保持したテンプレート(切開テンプレート)を構築する。次に、患者データから解剖学的情報を抽出し、適応させる際の基準点として与えることで本テンプレートを患者データ・実際の手術に適応させ、症例ごとに逐次モデルを作成することなく切開を表現する方法を提案する。

 成人CTボリュームデータを実験システムに適用し検証した結果、作成した切開テンプレートを患者個人のCTボリュームデータに合うように修正することで切開をシミュレート可能であることを確認した。 本発表では、開発した切開テンプレートを患者個人のボリュームデータに適応し切開シミュレーションを行う手法と、その結果と評価を述べる。