平衡構造とデータ混乱化を利用した安全なスキャン設計

長谷川 宗士 (0651098)


暗号回路を初めとする秘密データを持つLSIでは,安全性とテスト容易性の両方が求められている.安全性は秘密データを秘匿することで得られる一方,テスト容易性は可制御性・可観測性を高めることで得られる.安全性とテスト容易性は相反する要求である.LSIは信号線数・ゲート数が膨大なため,テスト容易性のためにはテスト容易化設計が欠かせず,一方法としてスキャン設計法が広く普及しており,スキャン設計法を非正規に利用したサイドチャネル攻撃が懸念される.

本発表では,先に述べたLSIに対するスキャン設計を利用したサイドチャネル攻撃に耐性のある安全なスキャン設計法を提案する.提案法では,平衡構造に基づく部分スキャン設計,スキャンチェーンシフト時のデータ混乱化により,スキャンチェーンからの秘密情報の漏洩を防止する.また,被テスト回路およびテスト容易化設計による付加回路のテスト容易性を保証し,スキャン設計における安全性とテスト容易性の両立を実現している.さらに,RSA回路に対する実験を行い,提案手法の有効性を示す.