画像特徴点の特異度を考慮したランドマーク照合による一枚の画像からのカメラ位置・姿勢推定の高速化とロバスト性の向上

西海 嘉志 (0651084)


携帯電話におけるヒューマンナビゲーションは,二次元的な地図上にGPSによって得られるユーザ位置と経路情報を表示することで道案内を実現している. しかし,二次元地図と現実空間の対応関係を直感的に把握することは難しく,システムの案内に従って移動することは必ずしも容易ではない. これに対して,現実環境を撮影した画像を用い,画像撮影時のカメラ位置・姿勢に基づいてCGによるナビゲーション情報を重畳合成することで,ユーザに直感的な案内情報を提供する拡張現実感(Augmented Reality;AR)ナビゲーションに関する研究が盛んに行われている.このような分野の研究は,従来比較的計算能力の高いウェアラブルコンピュータや車載機器上での映像の実時間処理を前提に行われてきた.これに対して,計算能力の低い携帯端末上でのARナビゲーションを想定し,扱いが容易な一枚の画像からカメラの位置・姿勢推定を行う手法が提案されている. この手法では,三次元位置と見え方が既知の複数のランドマークを事前にデータベース化した上で,それらのランドマークを入力画像上で探索し,照合したランドマークの情報を用いてカメラ位置・姿勢を6自由度で推定する. しかし,従来手法では,環境中に類似したランドマークが多く存在する場合に誤対応が発生し推定が失敗するという問題や,データベースに登録されたすべてのランドマークと入力画像上の特徴点の対応付けを総当たりで行うため計算コストが大きいという問題が残されている. このような問題を解決するために,本研究では,環境内に類似したランドマークが少ない特異なランドマークでは誤対応の発生率が低いこと注目し,信頼度の指標としてランドマークの特異度を用いたランドマークと自然特徴点の対応付けを行う. 具体的には,特異度の高いランドマークを優先的に対応点探索に用い,対応付けに成功した特異度の高いランドマークから空間距離を考慮してランドマークを選択することで,特異度の低いランドマークに対しても誤対応の低減を図るとともに,ランドマークの探索範囲を空間中で限定にすることで処理の高速化を図る. 実験では,屋外環境のランドマークデータベースを構築し,データベースのカメラパス周辺で撮影した入力静止画像からのカメラ位置・姿勢推定を行い,処理時間,精度,推定成功率を従来手法と比較することで,提案手法の有効性を検証する.