SH-2Aマイコンによる1リンクロボットアームの制御

西池 公志 (0651083)


1990年代後半から多くのヒューマノイドロボットが開発され,HONDAのASIMOといった自律二足歩行ロボット等が有名である. これらの歩行はZMP(Zero Moment Point)に基づいて制御を行うことで二足歩行の実現を可能にしている. しかし,ZMPを用いる手法は多くのアクチュエータを必要とし,計算量の多さやエネルギー消費量の多さなどの問題がある. 一方,より効率的で人間に近い歩行を実現させるため,重力と下り斜面を利用した研究として,受動歩行(Passive Dynamic Walking)がある. 受動歩行は歩行によるエネルギー消費量が少なく,簡単な機構で設計することができる. しかしながら,この手法による歩行は方向転換や速度の変化といった歩容の変化を行うことが難しいという問題を抱えている.

そこで一色らはコンパス型ロボットモデルを用いてモデルの機構と歩行運動の間にどのような関連があるのかを解明し 複雑な計算をせずに歩行速度制御や停止を可能とするPD制御を用いた歩容生成法を提案し,数値シミュレーションにより歩行を実現した.初田らはコンパス型モデルを基にコンパス型二足歩行ロボットを製作し, 股関節部に取り付けられたアクチュエータで,股関節の角度を摩擦力のような非線形に状態が変化するシステムに対して有効な制御手法 である逆最適制御による歩行を実現した. 初田らにより設計・製作されたコンパス型二足歩行ロボットはロバストかつエネルギー消費量が少ないシステムであるため 実用化が期待できる. しかし現在のシステムでは外部電源,多数のセンサーを動作させるためのA/D,D/A. エンコーダカウンタなどの外部電子機器,外部PCが必要であり,しかも膝関節がないため飛び石状の地形で しか歩行できないといった問題がある.実用化に向けてこれらの問題を解決する必要がある.

一方,SH-2Aアーキテクチャを持つ制御用マイコンとしてSH7206(ルネサステクノロジ)が製品化されている.これは,マイコン内部に8ビットのD/Aコンバータ,10ビットのA/Dコンバータ,エンコーダカウンタとして利用可能なマルチファンクションタイマユニットを持ち,マイコン1個で歩行ロボットを動作させるために必要なすべての機能を持つ. そこで本研究では,まず歩行ロボットと同様の実験環境として1リンク実験装置を開発し,つぎにSH7206マイコン1個のみを用いた角度制御システムを開発し,PD制御と逆最適制御角度制御による角度制御を行い実用化の問題点の一つである外部電子機器類の問題の解決を試みる.