実画像による運動視差3次元ディスプレイ

玉井 康之 (0651072)


近年,様々な方式の3次元情報を立体的に提示する3次元ディスプレイが開発さ れている. 3次元ディスプレイを利用することにより,高い臨場感や場の共有感を得るこ とができると期待されており,ロボットの遠隔操作や医療,アミューズメント など様々な分野において利用が検討されている. しかし,日常で利用されているテレビやコンピュータのモニタについては2次 元的にしか利用されていなのが現状である. また,3次元ディスプレイもいくつか製品化されているが,メガネやマーカを 装着することによる拘束感や,裸眼立体視ディスプレイのように複数視点を提 示することによる解像度の低下の問題があり,手軽に高臨場感を得ることは難 しい. このような日常環境でも利用可能な3次元提示システムが実現できれば,手軽 に3次元情報を利用することが可能となり,新たな情報提示や情報共有の可能 性が広がると考えられる.

先行研究として,非接触な3次元頭部位置計測に基づいて平面ディスプレイに 対してコンピュータグラフィックスの提示可能な運動視差3次元ディスプレイ を開発してきた. 本手法は表示デバイスとして一般的な平面モニタのみで構成可能であり,特殊 な表示装置を必要としないという利点がある. 本論文では,先行研究の手法を基に運動視差提示による高解像度な実画像3次 元ディスプレイの開発を行う. 実画像の立体提示を行うことができれば,コンピュータグラフィックスの立体 提示では不可能であったインターネットショッピングや遠隔会議,ロボットの 遠隔操作などの実環境でのタスクを行うことや,物体形状や距離の知覚といっ た臨場感を得ることができると考えられる.

本論文ではインターネットショッピングなど静環境での3次元のコンテンツに 応用可能な画像データベースを用いたオフラインでの運動視差提示手法と,ロ ボットの遠隔操作などに応用可能なオンラインでの運動視差提示手法の実装を 行った. そして,奥行き知覚実験とユーザへのアンケート調査によるシステムの評価を 行い,オフラインでのデータベースを利用した場合の離散的に取得される画像 の視野分解能についてや,アクティブカメラにおいて想定される提示遅れの許 容についての検討を行った.