拡大教科書作成のための文脈構造を重視したレイアウト最適化

辰巳 格 (0651065)


 弱視児童・生徒が使用する拡大教科書の慢性的な不足がわが国で社会問題となっている.この拡大教科書の製本は,主にボランティアなどが中心になって行っており,製本工程のほぼすべてが手作業で行われている.特に,拡大・加工された図表や文字を拡大教科書の紙面に再配置する作業は,膨大な組み合わせが考えられ,人間にとって難しい問題である.

 上記のレイアウトの再配置を計算機を用いて自動で行えれば,必要とする児童・生徒に拡大教科書を行き渡らせることができると思われる.本研究ではこのレイアウトの再配置を自動化するアルゴリズムの開発を行うものとする.このレイアウト再配置を実現するに当たり,(1)拡大教科書の何ページ目にどのパーツを割り当てるかという問題や,(2)レイアウトするパーツ同士重なりや紙面からのはみだしがなく,原本の内容を反映するようにレイアウトを行う問題,の2つの問題が考えられる.提案手法では,原本の内容を文脈構造グラフへモデル化し,このモデルを用いて(1)や(2)で導出した解候補を数値化することで,これら問題を最適化問題として考えることができる.特に,(2)の問題に対しては矩形間の任意の相対位置関係を列挙でき,重なり無く矩形をパッキングすることができるSequence-Pair法を応用することで実現を図る.

 提案手法における(1),(2)で設定した目的関数の妥当性を評価するために,左右ページへの割り当てと,紙面上でのレイアウトの評価関数を評価する実験を行った.