優先度情報を付加したランドマークデータベースに基づく実時間でのカメラ位置・姿勢推定

武富 貴史 (0651063)


近年,CGなどを現実環境を撮影した画像中に位置合わせして描画することで情報を付加する拡張現実感技術に関する研究が盛んである. 拡張現実感において,現実環境と仮想環境の位置合わせを行うためには,一般にカメラの位置・姿勢を推定することが必要となり,現在までに様々なカメラ位置・姿勢推定手法が提案されている. このような分野では,一般に,現実環境を撮影した画像をCGの合成対象として用いるだけでなく,カメラ位置・姿勢推定にも用いることで,精度の高い位置合わせを実現している. これらの手法の多くは,環境に対する事前知識を用いることで,現実環境に対する仮想物体の合成位置を決定している. 中でもランドマークデータベースを用いたカメラ位置・姿勢推定手法は,データベース構築の人的コストが低く,広域な環境を対象とした場合にもカメラ位置・姿勢推定の誤差が累積しないという特長を持つ. しかし,従来手法ではデータベースに登録されている多数のランドマークと入力画像上の自然特徴点を正しく対応付けるために多くの処理時間を必要とし,実時間でのカメラ位置・姿勢の推定が困難である. そこで,本研究では連続フレーム間でのランドマークの追跡とランドマークへの優先度情報の付加により,照合すべき自然特徴点数とデータベースから選択するランドマーク数を削減することで,実時間でのカメラ位置・姿勢推定処理を実現する. また,ランドマークに優先度情報を付加することにより,自然物が多く存在し,推定に有効なランドマークが少ない場所において位置・姿勢推定のロバスト性の向上を図る. ランドマークの優先度は,過去に同じ場所でユーザによって撮影された入力に対する推定結果をデーベースへフィードバックすることにより,各ランドマークが利用される確率を算出することで決定する. 実験では提案手法の有効性を確認するため,従来手法との比較によって処理速度とロバスト性の向上効果について検証を行った.