CI符号化によるOFDM衛星通信の非線形歪み軽減に関する研究

高橋 宏樹 (0651058)


近年,衛星通信は様々分野で使用されるようになり,需要が急激に増加している一方で,赤道上空に配置できる人工衛星の数および通信に利用できる周波数帯域は飽和に近付いている.そのため,衛星通信の大容量化を計るためには限られた帯域を有効に利用する通信方式が求められることになる. 無線通信の分野において周波数利用効率を高める手段として,無線LANや地上波デジタル放送で利用されているOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)方式が知られている.本方式は,複数の狭帯域信号を周波数多重し,並列伝送を行うことで,システム全体で高速な情報伝送を可能にする方式である. しかし,OFDM方式では独立に変調された異なる周波数の搬送波が重畳されるため,それぞれの搬送波が同位相になることで高いピークが発生する場合があり,信号全体においてピーク電力対平均電力比(Peak to Average Power Ratio:PAPR)が高くなるという欠点がある.結果,OFDM信号を衛星で用いられている非線形特性を持つ増幅器に通すと,高い振幅成分ほど大きな劣化が生じるため,誤り率を増加させる要因となる.

本研究では,この問題に対する解決手法としてCI(Carrier Interferometry)符号化によるOFDM信号のピーク抑圧法を用いてCI/OFDM衛星通信を行うことを提案している.CI/OFDM方式はOFDMと同様の特性を持ちながらPAPRを低く抑えることができるため,非線形歪みの影響が小さくなることが想定されるためである. 本発表では,まずOFDM方式やCI/OFDM方式について説明し,次に研究の中で実際に行ったCI/OFDM方式とOFDM方式の衛星伝送路における比較シミュレーションの結果を示すことで,衛星通信においてCI/OFDM方式が有効なものであることを説明する. また、本研究ではCI符号化の際に必要となる演算についても考慮し、演算量の軽減に関する2つの手法を提案した. これらの手法はそれぞれCI/OFDM方式に比べ一部の特性は劣化するものの演算量低減が可能であること発表で説明する.