本研究では,セル生産方式による人物大の装置の組み立て作業を想定している. このような作業では,製品の製造開始から全工程が完了するまでの時間が長く十分な改善が行われていないため,IEをより効率的に行うための支援が期待されている. このような作業では,作業者の全身の姿勢変化が多く見られ,作業者の姿勢を認識することが,作業に含まれるムダを発見するために重要である. 人物の姿勢推定の従来手法として,複数のカメラを用いて人物の骨格形状を推定する手法や,人物正面に配置された単眼カメラを用いて姿勢を推定する手法などがある. しかし,製造工場では多くの遮蔽物が存在するうえ,作業の様子を観測するセンサの設置場所は作業に支障を来さない場所に制限されるため, これらの手法で安定して人物の姿勢を推定することは困難である.
そこで本研究では,奥行き情報を取得することができる距離画像センサを天井に取り付け,上方より作業者を見下ろすように作業の様子を観測する. 上方より撮影した距離画像から人物の姿勢を反映した特徴量を抽出し,サポートベクターマシン(SVM)を用いて作業者の姿勢分類を行う. 本研究ではまず,人物大の装置の組み立て作業を模擬した実験により,SVMの学習で用いるパラメータの最適値および提案手法の姿勢分類精度について検討する. 次いで,実際の製造工場における人物大の装置の組み立て作業に対して提案手法を適用し,改善活動の専門家へのヒアリングにより提案手法の作業改善活動支援における有効性について評価する.