非線形ロバスト制御を用いた二足ロボットの歩行制御

高井 宗 (0651054)


1990年代後半からTOYOTAのパートナーロボットやHONDAのASIMOを始めとし,多くの二足ロボットが開発されてきた. %これらの歩行はZMP(Zero Moment Point)に基づいて制御を行うことで二足歩行の実現を可能にした. しかし,ZMPを用いる手法は多くのアクチュエータを必要とし,計算量の多さやエネルギー消費量の多さなどの問題がある. 一方,より効率的で人間に近い歩行を実現させるため,重力と下り斜面を利用した研究として,受動歩行(Passive Dynamic Walking)がある. 受動歩行は歩行によるエネルギー消費量が少なく,簡単な機構で設計することができる. しかしながら,この手法による歩行は方向転換や速度の変化といった歩容の変化を行うことが難しいという問題を抱えている.

われわれは従来の研究で,コンパス型二足ロボットのPD制御による歩行を実現した. 二足ロボットは股関節部に取り付けられたアクチュエータで,股関節角度を制御し歩行を行う. しかし,PD制御では股関節角度が目標角度に収束しないという問題がある. その理由として,PD制御は摩擦力の補償ができないということが考えられる. そこで,摩擦力のような非線形に状態が変化するシステムに対して有効な制御手法の一つに,制御Lyapunov関数(Control Lyapunov Function:clf)に基づく逆最適制御則がある.

本論文では逆最適制御による非線形ロバスト制御則を二足ロボットに適用する. 重力項と遠心力項をプレフィードバックにより補償することで,目標状態を平衡状態にしてから非線形ロバスト制御則を適用する手法を提案し,実機実験により有効性を示す. しかし,この提案手法ではPD制御より,歩行速度が遅くなるという問題がある. 実験のデータより,提案手法による制御では大きな後方トルク(遊脚を後方に振り下げるトルク)が入力されていることがわかる. この後方トルクが二足ロボットを後方に倒れこませ,歩行を遅くしたと考えられる. そこで,後方トルクについて検討を行った制御手法を提案し,実機実験により有効性を示す.