自閉症の病態解明に向けての計算論的コミュニケーションモデルの果たす役割についての一提言

坂本知華 (0651042)


昨今、義務教育の普通学級に数名程度は、広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)・注意欠陥多動性障害(ADHD)・学習障害(LD)などの発達障害の診断分類に含まれる可能性のある子供達が在籍しているといわれている。これらの障害が医学的に特に関心を寄せているのは、脳の器質的障害は微細であり、マクロ的には問題を指摘されない例があるにも関わらず、多種多様な認知・行動障害を呈する点や、これらの障害を理解することが「人の心を読む」などの高次脳機能の解明につながる可能性が大きいと考えられている点などである。

自閉症は、現在までのところ、遺伝子変異やミクロレベルでの脳の組織学的異常など様々な説が挙げられているが、それらの知見の中で有力な説を基にその主要症状であるコミュニケーションの障害を説明できる認知メカニズムは現在のところ未だ提示されていない。

本レポートの前半においては、コミュニケーション障害の原因を、心理学的研究やこれまでに蓄積された種々の神経科学の知見の考察から、より計算機でシミュレーション可能な説明を試みている。自閉症と各種の心理学理論との関係を述べ、これまであらゆる自閉症の症状を説明しようとした心理学理論の中に一定の法則を見出そうと試みている。

また、後半においては様々な心理学理論や脳機能計測等の医学的知見を考慮した、脳におけるコミュニケーションの計算論的モデルについてレビューを行い、本分野の現在の動向及び自閉症研究との接点及び前半でレビューを行った心理学理論と合わせて、自閉症の認知症状と計算機でシミュレーション可能な心理学理論との関係性を探っている。