家電状態を利用したホームネットワークシステムのための音声操作インタフェースの提案

榊原 弘記 (0651040)


ホームネットワークシステム(HNS) には,多様なネット家電やセンサ機器が偏 在的に接続される.したがって,従来の家電で用いられてきたリモコンに代わる, 新しい操作インターフェースの登場が期待されている.本論文では特に,HNS に おける音声操作インターフェースの適用可能性を考察する.従来から,様々な機 器を音声によって操作するアプリケーションが提案されている.しかしながら, それらの多くは,ユーザの発話を操作コマンドに単純にマッピングする手法に基 づいている.そのため,ユーザが事前に音声コマンドを覚えておく必要があり, 機器の種類,数が多くなりがちなHNS において学習のコストが非常に高くなる. また,システムが正しくコマンドを認識するかどうかは,音声認識エンジンの性 能や環境状態に大きく左右される.コマンドの誤認識による不具合や事故を最小 限に抑えるためにも,認識精度のさらなる向上に対する取り組みが必要である. これらの問題を改善するために,本論文ではHNS のための新しい対話型コマ ンドインターフェースを提案する.提案手法では,システムがユーザとの対話を 通して,機器名,操作名,パラメータの順番で,ユーザが段階的にコマンドを組 み立てる段階的コマンド構築機構を導入している.さらに,操作対象の家電が現 状態で実行可能な操作のみを,システムが提示・解釈する,家電状態を利用した コマンド提示・解釈機構を採用している.これら2 つのキーアイデアにより,ユ ーザの学習コストを下げ,かつ,システムの音声誤認識を大幅に改善することがで きる. また,提案手法を実装し,現在運用中のHNS に組み込んで評価実験を行った. 実験の結果,提案手法ではフルコマンド法に比べて,コマンド誤認識によるシス テムの誤動作が,平均75%削減された.また,SUS(System Usability Scale) を用 いたユーザビリティ評価では,提案手法が10%ほど高い数値を示し,提案システ ムの使用性の高さが示された.