OFDM受信機の移動受信環境におけるガード区間越え遅延波の抑圧手法と課題

小松崎 洋輔 (0651038)


本発表では,主に地上デジタルテレビジョン放送を移動体において受信する際,信号品質を向上させるためにはどのような手法があるか,また,それらの手法の長所及び短所を述べる.それらを通じて,OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)受信機を移動体受信に適用する際の必要な要件をまとめる.

現行では,地上デジタルテレビジョン放送と並行して行われているアナログ方式のテレビジョン放送は,国の施策により2011年7月24日までに全国で終了される.それ以降は地上デジタルテレビジョン放送のみとなり,対応するチューナーを導入しなければ放送を視聴することができなくなる.

地上デジタルテレビジョン放送には,移動体向けのサービスであるワンセグメント放送(ワンセグ放送)が行われているが,ある程度電力に余裕のある移動体(車載向け)などに関してはより情報量の多いフルセグメント放送(フルセグ放送)を受信したいという要求が高まってきている.

地上デジタル放送の移動受信環境においては電波が山や建物などに反射することにより複数の経路を経て受信機に到達するマルチパスが問題となる.加えて移動体の受信において,受信局は絶えず移動しているため,送信局からの距離は一定とならず,マルチパスの変動状況は複雑になる.また,移動することによるドップラー周波数シフトなどにより搬送波の周波数に誤差が生じる.ドップラー周波数シフトによる影響は信号の到来方向により異なるという特性を持つ.そのため,マルチパス環境では様々な遅延波と搬送波周波数誤差の影響を受けることになる.

地上デジタル放送に用いられているOFDMにはマルチパス環境による遅延広がりに対応するための機構としてガードインターバルが用いられている.このガードインターバル区間内の遅延であれば受信機側で信号を問題なく復調することができるが,それ以上の遅延となった場合,シンボル間干渉により受信特性が悪化する.これは特に地上デジタル放送で行われる予定である同一周波数中継(Single Frequency Network:SFN)が行われている際に問題になると考えられる.

これらの問題を解決する手法としてはアンテナを複数用いる空間ダイバーシチやアダプティブアレー,適応等化技術という方法が提案されている.また,類似の手法として有線系伝送技術のxDSL(Digital Scbscriber Line)においても,同様な手段が用いられている.

本報告では,これらの技術をOFDM受信機の移動通信における遅延波抑圧手法という観点からまとめ,利用されている研究事例を述べる.