都市や観光地における混雑状況を考慮した複数ユーザ同時巡回スケジューリング手法

栗山 恭嘉 (0651034)


都市部,観光地では慢性的な混雑が生じており,従来から人々の経済活動に多 大な損失をもたらしてきた.このような環境下において,移動経路,訪問施設で の混雑状況を考慮しながら効率よく目的地を巡回するスケジューリング手法の確 立は,配送計画などのビジネス効率や観光サービスの質を高めるために重要であ る.これまで,ユーザ間で重複しない移動経路を選択することで,道路における 混雑を緩和する方式や,テーマパークなどにおいて,直近の混雑情報から混雑し ていない施設を次に訪問することで,待ち時間を低減する方式が提案されている. これらの既存研究では,経路,目的地のどちらか一方の混雑を対象としたスケ ジューリングを行っているが,人気のある観光地近辺などでは,経路上の混雑と 各目的地における混雑の両方が問題となる場合があり,移動経路に加えて,各目 的地における混雑も考慮する方がより効率的である.そこで本研究では,各移動 経路,各目的地における混雑を同時に考慮した,複数ユーザ同時巡回スケジュー リング手法を提案する.

提案手法では,各ユーザの希望巡回目的地リストを入手した上で,(i)全ての ユーザが希望した目的地を同時に巡回したと仮定したシミュレーションを行うこ とで,時刻毎の各道路,各施設の混雑状況を予測した上で,(ii)予測混雑下にお いてユーザの要望をできるだけ満足するよう,ユーザが巡回する目的地の調整を 繰り返すことでスケジュールを算出する.しかし,利用する交通流モデルに従い 忠実にシミュレーションを行った場合には,多大な計算時間を要するため,大規 模な道路網への適応が困難である. そこで,シミュレーション時に利用する交通流モデルのパラメタを調整すること で,スケジューリングに要する時間の短縮を図る.上記提案手法を計算機上に実 装し,都市部道路網を模した地図を用いて評価実験を行った結果,20,000のユー ザについて,8分程度と実用可能な時間でのスケジューリングが可能であり,ユー ザが直近の混雑情報を用いて行動した場合と比べて,提案方式ではより高い満足 度を達成できることを確認した.また,提示されたスケジュールを無視して独自 の判断で行動するユーザが出現する場合や,道路網上に逐次的にユーザが加算さ れる場合など,より現実的な環境を想定した条件設定の下においても実験を行い, 提案手法が有効に機能することを確認した.