近年,多くの産業技術はその設計・運用に先進的な制御理論の結果を積極的に 用いて大きな成果を挙げている.そのような制御理論から導かれる制御系は基本 的に「フィードバック制御」であり,「モデルベース制御」である.一方,大量生 産品の多くでは依然として,実験に基づく「モデルなし制御」が多く用いられて いる.そして,一部の製品を除きそれらの機器ではパターン制御やon-off 制御な どの「オープンループ制御」が依然として広く普及している.これらの機器に対 しても,制御理論のアプローチを採ることで,性能や開発サイクルの向上が図れ るのであれば,それは今後の制御理論応用の目指すべき方向のひとつとなろう.
そこで,本研究ではその一例として調理家電,特に炊飯器を題材にその温度制 御について考察する.炊飯器の温度制御には,衛生面の問題から被制御量(つまり 米の温度) を直接計測することが出来ないという大きな問題が存在する.本研究 ではこの問題に対して,オブザーバをソフトセンサとして利用する方法と,H∞ 制御器による追従誤差最小化問題に帰着する方法の2 つの方法を提案する.そし て,それらの有効性をシミュレーションと実験により検証する.