非可聴つぶやきを用いた個人認証法における高性能化に関する研究

岡本 英樹 (0651026)


音声による個人認証技術はバイオメトリクス認証の中でも,発声という日常的な 行動によって行われるためユーザの心理的負担が少なく,またマイク以外の特別 なハードウエアを必要としないため,携帯電話などを利用した遠隔地からの入力 が可能である.そのため音声による個人認証技術の需要は今後,さらに増加する と考えられる.しかし,音声を用いる場合,盗聴の問題があるため,キーワード を利用した比較的高精度なテキスト依存型によるアプローチを取ることができな い.

この問題を解決すべく,新しいタイプの音声入力方法である非可聴つぶやき(Non -audible murmur ; NAM)を利用した個人認証法が提案されてきた. NAMとは周囲 に聞こえる事のないつぶやきであり,専用のマイクロフォンを体表に接着して集 音する.そのため体内の振動伝播を直接収録することができ,外部の騒音にも強 い.また,通常音声の代わりにNAMを用いることで,キーワードを発声する事が 可能となり,テキスト依存型の安全かつ高精度な認証が期待できる.

本論文では,テキスト依存型照合の長所であるキーワードの音韻系列情報をより 積極的に利用することの出来るGlobal alignment (GA)カーネルを用いた手法を 提案し,その実験結果を示す.また,照合システムの実用化を考えた際に必要と なる,話者を識別する為の閾値を事前に設定した場合の調査結果を報告する.