パワーアシスト装具と補助対象筋肉との相互作用の解析

植良 諭(0651016)


近年,ロボット技術の応用分野として,パワーアシスト技術の研究が盛んに行われてる. パワーアシスト装具とはアクチュエータの駆動によって装着者の運動を補助する機器のことであり, 高齢者の歩行補助や身障者のリハビリテーション, 工場内作業者の負担軽減などへの応用が見込まれている. パワーアシスト装具を駆動する制御信号として, 筋電位信号を利用する方法がある. 筋電位信号は人間の筋の発揮力と非線形の相関があり, 解析することで筋の発揮力を推定することができる. しかし, 筋電位信号を計測している筋肉の発揮力がパワーアシスト装具の補助効果によって減少すると, 筋電位信号が反応し,アクチュエータの出力も減少する. このような相互作用により,振動が発生する場合がある.

本発表では, 運動時のパワーアシスト装具と補助対象部位の筋肉群との相互作用を解析し, 振動が発生しない筋電位信号を取得可能な筋肉を選択する指針を提案する. まず,実環境を再現したシミュレーションを用いて振動現象を確認する. 振動現象は筋肉の発揮力特性と相関があり, 筋電位信号を計測する筋肉を変えることで振動現象が変化することを発見する. そして,シミュレーションを簡単化した線形フィードバックモデルを構築し, その伝達関数の安定条件から振動が発生しない筋を選定する手法を提案する. 最後に,提案手法を用いて改めて筋肉を選定し, 実機実験によって提案した手法の有効性を確認する.