ペルソナシナリオ法を用いたホームネットワークシステムのサービス開発と評価

伊原 誠人(0651014)


宅内の家電やセンサをネットワークに接続し,ユーザにより便利で快適な付加価値サービスを提供するホームネットワークシステム(HNS)の研究・開発が盛んである. しかしながら,ユーザにとって有益で付加価値のあるサービスが提供されない状況から,未だに一般家庭へ普及するまでには至っていない.

本論文では,開発者目線ではなく,ユーザの視点に立ったサービスを提案,実装するための手法として,代表的なペルソナシナリオ法をHNSのサービス開発に導入することを提案する. 具体的には,HNSを使用する代表的なユーザをペルソナ(=仮想的なターゲットユーザ)として詳細なプロフィールを決める. 次に,このペルソナに必要と思われるサービスをブレーンストーミングによって抽出する. そして,そのサービスの実現可能性を考察しサービスを選定した後,インターフェース,ペルソナ要求を明確にする. 最後に,そのサービスをペルソナが使用することを想定し,サービスの詳細をシナリオとして導出する.

提案手法の有効性を検証するために,実際のHNSのサービス開発事例に適用し,2つの評価実験を行った. 評価実験では,抽出された成果物の品質とサービスの開発プロセスの2つの観点から,提案手法の評価を行った. その結果,ペルソナに合致するユーザにとって満足のいく品質のサービスが開発できた. さらに,ペルソナを用いることで人間中心設計を学んでいない一般のサービス開発者でもユーザ中心のシナリオを作成できることを確認した.