物理計算に基づいた写実的な自然現象のコンピュータグラフィクスによる表現への要求は,エンターテイメントなどの分野でますます高まってきている.特にゲームなどにおいて,ユーザの入力に対してインタラクティブな表現を行うためには,実時間処理で物理現象がシミュレーション可能であることが求められる.我々の生活で身近な存在である水滴は,その計算コストの高さと水滴特有の物理特性から,実時間で違和感のないシミュレーション手法が確立されていないものの一つである. 本論文では,粒子を用いた液体シミュレーション手法であるSmoothed Particle Hydrodynamics(SPH)を拡張し,接触角の違いを表現可能な界面張力モデルを用いて水滴を表現する手法を提案する.本手法では,固体との界面付近にある粒子の近傍粒子の数が接触線からの距離と関係づけられることに着目し,接触線からの距離に応じた力を粒子に界面張力として与える界面張力モデルにより,接触角の異なる水滴形状や,体積の大きい水滴の扁平形状の表現を可能としている.また,陰曲面を生成するための密度ボリュームを平滑化することにより,粒子法を用いた水のシミュレーションに顕著に見られる水面付近の粒子による不自然な凹凸を減らし,滑らかな水面の表現を可能とする.本論文では,提案手法を用いて実験を行い,粒子群による適切な水滴形状の生成を確認した.