マルチホップ無線ネットワークにおける中継局性能を考慮した複数経路構築法に関する研究

足立 直樹 (0651003)


近年,パケットをリレー式に伝送していくマルチホップ無線ネットワークが注目を浴びている. その背景には携帯端末における大容量データ通信の需要が高まる中,現在のセルラーシステムでは端末の消費電力や収容ユーザ数などの点で 大容量通信の実現が困難だと考えられている現状がある. このような問題を解決する一つの方法として,移動体通信にマルチホップ通信を適用した方式が有力な解決方法として注目されている. 無線マルチホップによる通信の利点としては,新たに固定の有線通信設備を設置することなく 無線端末のみによって柔軟に無線ネットワークを構築できること,また既存のシステムとの融合により 無線カバレッジエリアを拡大できることなどが挙げられる.
マルチホップ無線ネットワークの利用を考えた場合,パケットを中継するノード性能は出力電力の違いや通信性質などの点でノード毎に多様であると考えられる. しかし,従来のマルチホップ通信に関する研究はノードが互いに対等の機能をもったアドホックネットワークのようなものを検討しているものがほとんどであり, 中継局性能を考慮した経路構築に関する統計的な評価はこれまでほとんどなされていない.
本研究では,マルチホップ無線通信ネットワークにおける中継局の性能差に着目し機能分類を行うことで通信品質の向上を目指す. その結果,従来の単一性能の中継局のみで構成されたネットワークに比べ,中継局に性能差を与えることによって, 一定以上の品質で通信を行うことのできるユーザ数が増加することを確認した.