神経細胞は発生段階初期において,極性形成という興味深い現象を示す.
極性形成とは,神経突起から1本の軸索と複数の樹状突起を形成する発生過程で
あるが,初期の神経突起は軸索にも樹状突起にもなり得る.
また,極性形成は,外部シグナルのない対称な環境下でも起こる.
つまり極性形成は,対称な構造を持った神経細胞が,
自発的に非対称なパターンを形成する現象とも言える.
しかし,極性形成の数理的構造とその分子実態は明らかにされていない.
最近の研究で,Shootin1という極性形成において非常に重要な役割を果たすタンパク質が発見された.
このShootin1分子によって極性形成を説明するのが研究の目的である.
まず,Shootin1の定量的データを得るために,
蛍光顕微鏡画像から自動定量化するプログラムを開発した.
そして得られた定量的データを解析し,その結果からモデルを推定することで,
極性形成の数理構造を提案した.