代謝経路によるアルカロイドの分類 種固有のアルカロイド代謝経路の体系化

海内梨紗(0551032)


  創薬においては、リード化合物を化合物ライブラリーから探索する研究が行われている。リード化合物は副作用がない、活性が高い、新規性があるという条件が求められる。2003年、Feherらにより、人工合成物質、天然代謝物、薬物の構造多様性の比較が行われた。その結果、天然代謝物は人工合成物質よりも構造が多様化していること、開発された薬物も多様な構造が化学構造母核となっていることがわかった。以上のことより、創薬においては、人工合成物質から天然代謝物への回帰が重要となってきた。
  本研究では、天然代謝物の中でも特に多様な母核をもち、多様な生理活性を示すアルカロイドの体系化を行った。まず、個々の種、属、系統を超えて、既知の代謝経路を統合していき、アルカロイドの反応経路マップの構築を行った。その結果、アミノ酸由来のアルカロイドの反応経路の統合ができた。現段階では、まだすべての代謝経路がわかっているわけではない。しかし、一般的に代謝経路の近い代謝物は化学構造母核が似ていることが知られている。まだ明らかになっていない代謝経路は、母核をてがかりとし、既知の代謝経路情報と代謝物の母核の情報の統合をしていく必要がある。そのため、化学構造母核プロファイルによる類似性分類を行った。その結果、類似代謝物をまとまりのある化合物群に分類でき、代謝経路の予測を行うことができた。本研究は、代謝物質の経路予測、母核を中心とした薬物構造活性相関研究、代謝経路を効率化した組み換え生物の設計などに役立つであろうと期待される。