自律移動型ロボットにとって, 自己位置同定問題は重要な問題である. この問題に関して多くの解決手法が研究されてきた. その中で,近年注目されているのが, 問題を確率的に捉える手法である. 確率的なアプローチでは, システムや環境を確率的モデルで定式化し, ベイズ推定法に基づいて再帰的に計算可能な 自己位置推定手法が実現されている. 特に, Kalman Filter(KF)とMonte Carlo Localization(MCL)は 確率的アプローチの中で現在広く用いられている手法である. KFは少ない計算量で正確な状態推定を行うことができるが, 状態の確率分布をガウス分布で近似するため, 確率分布が単峰型でなければならない. また,推定を失敗した時に, 推定を回復することが困難である. MCLでは任意の確率分布形状に対応することができるが, 推定の精度を上げるのに比例して計算量も増加する.
本論文では,KFとMCLを融合したMixture Kalman Filters(MKF) を用いた新たな自己位置同定アルゴリズムを示す. そして,計算機シミュレーションとネズミ型自律移動型ロボット Cyber Rodentを用いた検証実験によって, 提案手法の有効性を示す.