配列や全体的な立体構造が類似する相同蛋白質を持たない機能未知蛋白質において、補因子等の蛋白質機能に関与するリガンドが結合する部位を発見することができれば、機能推定につながる知見が得られる。しかしながら、このリガンド結合部位探索の前提となる、非相同な蛋白質の同一リガンド結合部位における類似性の有無について定量的・包括的な調査は行われていない。そこで、本研究では非相同な蛋白質の同一リガンド結合部位における類似性の有無を明らかにすることを目的とし、リガンド周辺の一致原子数(リガンドに対する空間配置および原子種が一致する蛋白質原子の数)を指標として、PLP、FADおよびADPの結合部位のそれぞれにおいて類似性の調査を行った。リガンド周辺の定義としては、5Åおよび最近接原子の2種類を試した。周辺5Åでは非相同なPLP、FAD結合部位において、ランダムな一致との間に統計的に有意な差が認められなかったが、最近接原子ではいずれの非相同な同一リガンド結合部位もランダムな一致に比べて統計的に有意に高い類似性を示した。特に、PLP結合部位ではランダムな一致との差が顕著であった。この結果は、非相同な蛋白質の同一リガンド結合部位における類似性はリガンドに対して直接相互作用する蛋白質原子の空間配置に強く現れることを意味しており、同時に、機能未知蛋白質に対するリガンド結合部位探索において、最近接原子からなる構造テンプレートの使用が有効であることを示唆する。