動的な環境における状態推定の脳イメージング研究
森本智志 (0551123)
意思決定を行う際には、対象となる系に関する
知識が重要となるが、多くの場合では系から不確実な観測しか得られないため、不完全な情報を推定によって補っている。推定課程は、系がどのような法則に従って動いているかという環境ダイナミクスの同定と、それを知ったうえで、さらに系
が現在どのような状態にあるかという隠れ状態の推定の2つの要素に大分される。
本研究の目的は、隠れ状態の推定と環境ダイナミクスの同定に関係する活動を、一つの課題の脳計測結果から分離し、推定に関わる脳の仕組みを明らかにすることである。
隠れ状態を推定する課題である'Tiger problem'を基に、ダイナミクス同定と隠れ状態の推定の両方を必要とする拡張版課題を設計し、課題遂行時のヒト脳活動をfMRIによって計測した。
その結果、前部前頭前野に状態の不確実性に相関する脳賦活が確認された。これは隠れ状態の推定に前部前頭前野が関与するという先行研究と矛盾しないものであった。また右背側前頭前野に、環境の不確実性に相関する脳賦活が認められ、これらの部位が環境ダイナミクスの同定に関与している可能性が示唆された。