ペアリング写像を用いた時間限定鍵の実現法
湊 大助 (0551120)
スクランブル放送に代表される,暗号鍵を利用した情報サービスにおいては,サービス提供者が発行するユーザ鍵を持っていることが,サービス享受の条件となっている.このようなサービス形態では,ユーザの加入と脱退が頻繁に行われるため,サービス提供者はユーザ鍵を効率的に管理する必要がある.特に,脱退したユーザのような,対価を払っていないユーザにサービスを提供するわけにはいかないため,サービス提供者はそのユーザが所持する鍵を無効化することが必要となる.しかし,データ複製の容易さから「ユーザ鍵の取り上げ」は実質的に不可能である.そこで次善の策として,暗号鍵を定期的に更新し,更新に対応したユーザ鍵を毎回再配布する手段が取られるが,これには大きなコストが発生する.決められた時間帯にだけ有効な鍵が存在すれば鍵無効化を解決できると考えられるが,今までにそのような鍵の実現法は知られていない.
本研究では,階層型IDベース暗号の技術と,双線形写像の一種であるペアリング写像を利用して,そのような鍵の実現法を二種類提案している.提案方式により生成される鍵は,時間の進行に応じて自動的に有効化/無効化する機能を持ち,その有効期間を柔軟に設定することができる.また,一つめの提案方式に関しては,一方向性暗号であることを証明することによりユーザの結託攻撃に耐性を持つことを示し,安全性を保証することができた.更に,本方式により生成される鍵及び暗号文のサイズに関する評価も行い,各時刻で鍵を個々に持つ従来方式に対する優位点と問題点を明確にした.本発表では,一つめの提案方式を中心に,各アルゴリズムや特徴に関して説明する.