術具操作に対応したボリューム変形シミュレーション

松雪 大貴 (NAIST-IS-MT0551117)


外科手術の計画や診断に、CTやMRIなどの断層画像集合からボリュームレンダリングによって生成される三次元再構築像(ボリューム像)が用いられる機会が増加している。ボリューム像を参照することにより、二次元の画像を参照する場合と比べ、臓器の形状や腫瘍などの位置関係が把握しやすくなる。最近では、ボリューム像を参照するだけでなく、像上で様々な術式をシミュレートし、綿密な計画を行いたいといった要求がある。

これまでにもボリューム像を用いて、術前計画を支援するシミュレーションは開発されているが、計算コストが大きい、操作の自由度が小さいといった問題が存在し、臨床現場における十分な実用はなされていない。綿密な手術計画の支援には、術中で用いられる術具に対応したボリューム像の変形操作と、そのシミュレーション結果の高速な描出が必要不可欠である。

本研究では、術中での術具操作に対応したボリューム変形シミュレーション方法の開発を目的とする。術具とボリューム像とのインタラクションを統一的に記述するために、点群を拘束し変形を行なう面操作シミュレーション方法を提案する。また、ボリューム像に対する操作の支援のための操作領域の可視化方法に加え、変形計算の高速化方法を提案する。

患者実測データを実験システムに適用し検証した結果、ボリューム像に対して提案方法により、手術中に実施される開創、圧排、把持の一連の術具操作をシミュレートできることを確認した。また、シミュレーション結果の妥当性を確認するとともに、対話操作を可能とする更新レートを達成することを確認した。以上から、提案方法は術具操作に対応したボリューム変形を可能とし、術前計画シミュレーションの適用範囲の拡大に貢献するものと考える。