センサネットワークにおける鍵事前格納方式の改良法の提案

松本 律子 (0551116)


センサネットワークは,無線通信機能,外界を計測する機能を有するセンサノードにより自律的に構成されるシステムであり,災害救助,自然観測等,幅広い分野への応用が期待されている.センサネットワーク上ではノード同士が直接通信を行うため,安全なノード間通信の確立が望まれる.そのためにはノード間で暗号鍵を共有する必要があるが,センサノードは非常に小さな計算資源しかもたないため,汎用のコンピュータネットワークで広く用いられている鍵共有方式を利用することは現実的でない.そこで,ノードを配布する前に,ノード内にあらかじめ鍵を格納しておく鍵事前格納方式が研究されている.鍵事前格納方式ではランダムに選んだ2台のノードが高い確率で暗号鍵を合意できること(可用性),攻撃者がノード盗難攻撃を行った場合でも盗難に合っていないノード間通信の安全性が損なわれないこと(頑健性)が求められ,これらはトレードオフの関係にあることが知られている.本研究では,トレードオフの関係を改善するため,ノードに鍵を組織的に割り当てる方式を2つ提案する.1つ目の方式では比較的小さな鍵集合を複数用いて,2つ目の方式では代数幾何的な性質を利用し,ノードに事前格納する鍵を決定する.また,両方式の可用性,頑健性を評価し,既存研究にて提案されている方式と性能を比較する.本発表では,2つ目の方式について中心に述べ,方式の有効性を示す.