車速パルスとMSASによる初期状態オブザーバを用いた自動車の自己位置推定

速水 能弘(0551100)


現在,市販自動車の多くにカーナビゲーションシステムが普及しており,その利便性が多くのユーザーに認識されている. また,一部の自動車においては,車庫入れ動作を自動で行う制御技術が搭載されるなど,自動車の利便性,安全性は益々向上しようとしている. 自動車におけるこれらの優れた技術に共通する要素が,自動車の自己位置推定である. 両者の技術における自己位置推定手法に着目すると,前者においては,GPSを用いたスターレコニングにより自動車の位置推定を行っており,後者は,オドメトリなどを用いたデッドレコニングにより位置推定を行っている. 前者の手法は,計測精度が自動車の移動距離や時間に影響せず常に一定の精度で計測が可能であるが,更新周期が長く誤差分散が大きいといった問題がある. また,後者の手法においては,更新周期が短く,計測値の誤差分散は小さいものの,物理外乱に弱く移動距離や時間の増加に対して誤差が増加する. そのため,高精度な自己位置推定を行うために,二つの計測情報を組み合わせるセンサフュージョンが研究されている.

本発表では,樋口らにより提案されている初期状態オブザーバを用いたセンサフュージョンの自動車への適用を行っており,スターレコニングにGPSの補強システムであるMSAS,デッドレコニングに用いるセンサとして車速パルスを用いた適用手法を提案している. そして,提案手法で用いるMSASは,システムの構築段階であるため,利用者側での測位精度の検証は行われていない. そのため,最初にMSAS試験信号を用いた電子基準点での定点観測,移動体の測位実験からなる測位精度検証実験を行ったので,その結果を報告する. 次に,提案手法の一つとして,スターレコニングにMSAS,デッドレコニングに車速パルスによるオドメトリを用いた自己位置推定手法を自動車に適用した自己位置推定実験を行った. 自己位置推定実験では,10[km/h]と20[km/h]で直線移動する自動車の自己位置推定を行っている. 実験の結果から,オドメトリの問題点が確認できたので報告する. 最後に,オドメトリの問題改善策として,デッドレコニングに車速パルスによる拡張オドメトリ,スターレコニングにMSASを用いた,Fig.1に示す自己位置推定手法を提案し,自動車を用いた実験から提案手法の有用性を確認したので報告する.実験結果の一例として20[km/h]における推定結果をFig.2に示す.

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Fig.1 System configurration of sensor-fusion by extended odometry and MSAS
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Fig.2 Estimation by sensor-fusion using extended odometry and MSAS