仮想空間を用いたスマートスペースアプリケーションのシミュレータの提案

西川 博志 (0551095)


近年,多数のセンサや情報通信デバイス をコンテキストおよび利用者の好みに従い適切 に制御する スマートスペースを, 効率よく低コストで開発するための技術が切望されている. 本研究では, スマートスペース を実現するアプリケーションソフトウェア を高信頼かつ低コストで開発するための仮想テストベッドを提供する シミュレータを提案する. 提案するシミュレータでは,3D仮想空間を構築し,その空間上に仮想のデバイスを設置し, アプリケーションソフトウェアの動 作を現実世界と同様にシミュレートすることを可能にする. そのために,3D仮想空間を自由に設計でき ,簡単に空間上に仮想のデバイスの設置を可能にする機能,デバイス間の通信を シミュレートする機能, エアコンなどの機器の動作による空間の物理量(室内温度など)の時間的変化 を再現する機能,アプリケーションの動作状況を3Dグラフィックスにより可視化する機能, 仮想ユーザを空間内で自由に動作させる機能などを実現する.また, 各仮想デバイスの制御用ソフトウェアは 実デバイスのものとソースレベルで互換性を持たせる. さらに,本研究では, アプリケーションソフトウェアおよび デバイス制御シナリオが,与えた仮想空間およびそこで発生しうる様々なコンテキストに対し,意図通りに動作するかどうかを系統的かつ視覚的に調べるテスト機能を実現する. 提案するシミュレータの有効性を評価するために, 仮想空間上にスマートホームと コンテキストに従って情報家電を制御するアプリケーションソフトウェアを構築し 実験を行った. 結果, 本シミュレータが,実用規模のスマートスペースアプリケーションを実行するのに 十分な性能を有すること,アプリケーションソフトウェアおよびデバイス制御シナリオ開発時の不具合発見に有用なこと,などを確認した.