線条体シナプス可塑性の分子機構の動力学モデル

中野高志 (0551092)


線条体は黒質と大脳皮質からそれぞれドーパミンとグルタミン酸の投射を受け ている.中型有棘細胞によって形成される皮質線条体シナプスではこれらの入力 によって引き起こされる可塑性が報告されていて,皮質線条体刺激のみの場合に はシナプス伝達効率の長期抑圧が起こる一方で,そこにドーパミンが加わると長 期増強がみられる.また中型有棘細胞の膜電位の高い状態で皮質線条体刺激を与 えると長期増強が起こるという膜電位依存性のシナプス可塑性も報告されている. 本研究ではこれらのシナプス可塑性を引き起こしている分子機構を理解するため に細胞内シグナル伝達経路の動力学モデルを構築し,計算機シミュレーションを 行った.その結果,ドーパミン依存の長期増強にはDARPP-32 が不可欠でPKA の活性が強い影響を与えることがわかった.PKA の活性にはPKA,PP2A およ びDARPP-32 でなすポジティブフィードバックループの活性が重要である可能 性を示唆した.また中型有棘細胞の膜電位依存性の長期増強にはCaMKII の活性 が重要であることがわかった.