ロボット音声対話システムにおけるNAMマイクロホンを用いた内部雑音抑圧

田中 直哉 (0551082)


本論文では,ロボット音声対話システムにおいて高度な内部雑音抑圧を行うために,NAMマイクロホンをロボット内部に設置した.新しい内部雑音測定及び抑圧手法を提案する. 人とロボットとの円滑な音声対話システムを実現するためには,高精度なハンズフリー音声認識技術の導入が不可欠である.既にこの実現のため,空間的サブトラクションアレー (SSA)が報告されており,ハンズフリー音声認識に有効であることが報告されている. しかし SSAでは,ロボット自身が発する内部雑音を考慮していないため,単純にロボット音声対話システムに応用しただけでは音声認識精度が低下する問題があり,円滑なコミュニケーションが困難である.

本研究ではこの問題点を解決するために,内部雑音測定用マイクロホンとして NAMマイクロホンをロボット内部に設置した,新しい内部雑音測定及び抑圧手法を提案する.NAMマイクロホンとは肉体を伝わる振動を測定することが可能なマイクロホンであり,ロボット内部に設置することで,内部雑音の原因と推測されるロボットの筐体振動を正確に測定することが可能になる.また,音声認識器の観点より残響を反映させた音響モデルを導入し,その有効性を実験を通して論ずる.

提案法及び従来法を用いた評価実験結果より,提案法が従来法に比べ,高い音声認識精度を達成することがわかった. 実験 1ではロボット静止時における評価実験を行い,SSAに比べ 3.8%の単語正解精度の向上が確認された. 実験 2ではロボット動作時における評価実験を行い,肘振り・腕振り・首振り時それぞれにおいてSSAに比べ,7%以上の単語正解率の向上が確認された. また,実験 1,2において残響を考慮した音韻モデルを用いることで,認識精度の向上が確認された.