車車間通信に基づく渋滞情報収集システムへのバスの導入による
情報伝播効率の改善

新川 崇 (0551067)


近年,近距離無線通信のアドホック通信機能を用いて, 車車間・路車間で通信を行うことによりリアルタイムに交通情報を交換する方法が 注目されている. 先行研究として,道路を走行する各車両が道路の混雑状況を自律的に収集し, 車車間通信を用いて情報の管理・伝播を行う方式が提案されている. この方式では,道路網を小さな領域に分け,走行する各車両は領域毎に自身が計測・収集した情報を 周辺領域の車両に伝播することで車車間での情報共有を実現している. しかし,車両密度が一時的に低くなった領域で情報の伝播を仲介する車両がなくなってしまい, 情報の精度や伝播効率が悪くなったり,最悪の場合収集した情報が失われる可能性がある. 本研究では,先行研究における車車間通信を用いた情報の収集, 維持,伝播の効率を様々な状況において高めることを目標に, 既知の経路を移動するノードをデータ運搬のための媒介(フェリー)として用いることで 効率的なデータ伝播を実現するメッセージフェリーという手法に注目し, 定期巡回車両であるバスをフェリーとして利用した車車間通信による渋滞情報収集手法を提案する. 提案手法では,バス周辺の車両が収集・保持している情報がバスに蓄積されるように 車両・バス間での通信を行わせるとともに,バスに蓄積した情報を定期的に 周辺車両に散布することで,一時的に車両密度が低くなったエリアでの情報伝播効率を改善する. また,限られた通信帯域の範囲内で効率よく情報伝播ができるようにするため, バス・車両間で交換する情報は,必要な情報を列挙した 制御パケットをあらかじめ交換することで行う. 提案システムを交通流シミュレータNETSTREAM上へ実装し, 評価を行った結果,車両のみの通信よりも周辺車両へ伝播されている情報量増加し, より安定した情報の維持が可能であることを確認した.