可変リアクタンス寄生素子による符号化直交周波数分割多重伝送系のバースト誤り削減効果

白石 勇樹 (0551065)


 地上波デジタルテレビ放送の移動体向けサービスである1セグメント放送が2006年4月に開始された。この地上波デジタルテレビ放送ではマルチパスフェージング対策として畳み込み符号とリード・ソロモン符号による強力な誤り訂正符号化が行われている。しかし、携帯電話などの携帯端末で歩行中や立ち止まって受信する状況では、受信電界強度の時間変動が非常に緩やかになる低速フェージング状態となる。その結果、非常に長いバースト誤りが発生し、誤り訂正効果が大幅に低下することが知られている。バースト誤り対策としては、インターリーブがあるが、地上デジタルテレビ放送の規格では、インターリーブ深さは最大400ms程度であるため、フェージング変動が数Hz以下の低速フェージング環境になると400msを超えるバースト長のバースト誤りが発生し,効果が小さいという問題があった。よって、一般的に用いられる方法としてダイバーシチの適用が考えられるが、回路規模が大きくなるため携帯端末への適用は困難である。
 そこで、より簡単なハードウェア構成で低速フェージングによる長期間にわたるバースト誤りを削減する可変リアクタンス法を提案する。本提案方法では、受信アンテナ近傍に可変容量ダイオードと発振器を接続した可変リアクタンス寄生素子を配置し、発振器を十〜数十Hzで発振させることで、受信アンテナのアンテナ特性を変化させ、擬似的な高速フェージングを発生させることによって、低速フェージングによる長期間にわたるバースト誤りを削減する。
 本発表では、計算機シミュレーションによって解析した2波等電力レイリーフェージング環境下と6波レイリーフェージング環境下における提案方式の有効性を示す。