脳磁図と皮質脳波を用いた運動パターンのデコーディング
澁谷 大輔 (0551962)
デコーディング(復号化) とは,脳活動データを解析することによって脳内で表
現されている被検者の状態を予測する手法のことをさす.近年,このデコーディ
ングの手法を用いて筋活動を介さず機器の操作を行なうbrain-machine interface
(BMI) の研究が盛んである.脳活動を計測する方法として侵襲型計測と非侵襲型
計測がある.侵襲型計測は高いS/N比で脳活動を記録可能である一方,外科手術
が必要であり,使用者への負担が大きい.非侵襲型計測は頭表からの計測のため
ノイズの影響を受けやすいが,身体を傷つけずに計測が行なえるために非侵襲型
計測によるBMI が望まれている.本研究では非侵襲型計測である脳磁図を用い
た運動パターンのデコーディングを行なった.さらに,S/N 比が高い信号を
解析することによりデコーディング手法の可能性を検討し,非侵襲デコーディン
グにおける手がかりを得るため,侵襲型計測であるが脳を傷つけずに活動計測で
きる皮質脳波によっても運動パターンのデコ−ディングを行なった.
脳磁図や皮質脳波による従来のデコーディング研究では左右,手足の運動や計
算を行なうといった脳の活動領域に違いが出易い簡単なタスクを用いたものが多
い.そこで,本研究では脳活動領域が重なっている右手の運動パターンのデコーディング
に試みた.
従来よりも細かな脳活動の差をデコーディングすることにより,自由度が高いBMI の構築が期待できる.
本発表ではまず,デコーディング手法とBMIについての説明を行う.その後,
他のBMI研究を紹介するとともに,本研究の位置づけと目的を述べる.
次に,運動パターンとしてジャンケンタスクを用いた脳磁図実験について述べる.
実験概要について説明し,オンラインデ・コ−ディングの可能性を検討するため,
単一試行データを用いた解析を行なった結果を述べる.また,解析に用いた特徴量と
判別結果の関係についての考察を行う.さらに,右手腕の運動タスクを行なう際に
記録される皮質脳波データを脳磁図と同様に解析した結果を述べる.