カラーユニバーサルデザインのための没入型色覚シミュレータ

小村 仁美 (0551055)


カラーユニバーサルデザインの概念の普及に伴い,デザイン段階で色弱者の色の見えをシミュレーションすることの重要性が急速に高まっている.しかし,現在開発されているシミュレータはPCのディスプレイ上でのみ動作するものがほとんどであり,空間デザインなどの幅広い視野やスケール感を必要とする色彩計画に用いるには限界がある.

本研究では,330°視野の没入型円筒ディスプレイを用いて,等身大のスケールで色弱者の色の見えを確認しながら配色を検討することが可能な,インタラクティブ性を備えた色覚シミュレータシステムを構築した.

提案システムでは,全方位カメラを用いて得られた全方位画像をパノラマ画像に展開し,各色覚型の見えに変換を行う.変換には,Brettelらの色覚変換式とHanの色変換高速化手法を組み合わせて用いることで,演算コストを低減した.そして,変換後の画像を没入型円筒ディスプレイに表示することで,器具の拘束なく複数人で色弱者の視界を体験することを可能にした.さらに,ユーザーが装置の内部から操作できるインターフェースを備え,任意の場所の色変更など,カラーユニバーサルデザインに配慮した配色の検討が容易に出来るようにした.