VSAT信号重畳伝送システムにおける不要波復調型キャンセラの構成

小橋 浩之 (0551052)


衛星通信は近年,通信容量の大容量化や通信速度の高速化が進んでいることに加え,静止衛星が増加し,静止軌道スペースが減少していることから周波数の有効利用が求められている. 周波数の有効利用を図る手段として信号重畳方式が検討されている. この方式は,複数の地球局から同一周波数帯を用いて信号を送信する. 信号を受信する際,地球局は不要波のレプリカ信号を生成し,受信信号から減算することで希望波を得る. 生成するレプリカ信号は自局送信信号の振幅や位相ときわめて正確に一致しないと,減算後に自局送信信号とレプリカ信号の差が残留し,これが希望波信号である他局送信信号の干渉となる. さらに仮にレプリカ信号を正確に生成しても減算タイミングを正確に合わすことができなければ同様に残留信号が発生する. よってレプリカ信号の位相,振幅,減算タイミングの調整が高精度に要求される.

本発表では,数十から数千ある子局のシステムを変更することなく,既存のVSATシステムに信号重畳方式を適用し,今までに検討されていなかったディジタル信号処理により高精度にレプリカ生成を行うことが可能である不要波キャンセラを提案する. また,シミュレーションにより提案キャンセラの動作や希望波信号の誤り率特性を評価することでシステムに適したD/Uやビット精度を明らかにする. さらに,JCSAT-1B向け地球局設備を用いて重畳信号を発生させ,そのデータをキャンセラでシミュレータ解析を行うことにより増幅器の非線形の影響についても考察する.