異種命令セット同時実行プロセッサOROCHIにおける命令分解機構の設計と評価

小島 知也 (0551048)


近年,携帯端末機器や組み込みシステムでは, OSなどの制御プログラムと,マルチメディア処理プログラムを同時に実行することが一般化しつつある. こうした背景から,本研究では,異なる命令セットを同時実行するプロセッサ“OROCHI”の構成について 詳細な検討を行った. OROCHIはARM命令を採用し,スーパスカラ実行するバックエンド部においては命令が1サイクルで実行完了することを 前提として低電力化を図る構成となっていることから, ARM命令をRISC型内部命令に分解する機構が必要である. 命令分解機構は,従来の一般的なパイプラインに対して,命令分解ステージを追加することにより実装するため, 命令変換の回路規模が大きくなると,複数のパイプライン段数に分割する必要が生じ,性能低下が生じる. そこで本論文は,CISC型であるARM命令をRISC型内部命令に分解する命令分解ステージの構成を検討し, 1ステージにおさまる構成にできるかどうかについて回路の規模および性能について定量的評価 を行った.評価の結果,ARM命令を分解するARMデコーダステージとHOST命令を分解するHOSTデコーダステージ に2分割することが妥当であり,かつ日立の0.18μテクノロジを用いた場合,各ステージの遅延時間が 2.53nsと2.44nsとなり,提案する命令分解機構が1ステージと同等の遅延時間におさまることがわかった.