実時間切開シミュレーションのための¥¥有限要素モデリング方法

河本敏孝 (0551040)


メスによって人体を切り開く手技,いわゆる切開手技は外科手術の基本であり, 外科医が最初に身につけなければならない手技の一つである. このような医療手技の訓練機会や習熟できる症例数の増加を目的として, Virtual Reality (VR)技術を用いた手術計画や臨床教育を支援する 外科手術シミュレーション技術が注目されている. 切開手技の訓練環境を提供するためには,軟組織の切開表現が求められる. これまで幾つかの切開モデルが提案されてきているが,切開時の物理現象を精度よくモデル化し, 実時間で応答を返すための方法は十分に確立していない.

本研究では,軟組織に対する切開を視覚・力覚フィードバックを伴って試行できるVR環境の実現を目指し, 実時間切開シミュレーションのための有限要素モデリング方法の開発を目的とする.

本論文では,従来方法とは異なり,要素を分割することなく, 切開創を幾何学的,力学的にモデル化する方法を提案する. 提案方法は,切開前後で要素数を変化させないことで, 計算時間の増加を抑制しつつ,剛性マトリクスの高速な部分更新を可能とする.

提案モデルの評価,検証のために汎用PC上に一連のアルゴリズムを実装した実験システムを構築した. 実験を通して,有限要素弾性体モデルの形状変化が実物の弾性体試験片の振る舞いと類似していることを確認した. また,計算時間の測定により,提案方法が従来の3〜5倍の高速化を達成し, 実時間シミュレーションが可能であることを確認した.

  以上により,提案方法は汎用PC上で軟組織切開時の切開創を精度よく表現し, 実時間切開シミュレーションを可能とする. 開発したアルゴリズムが次世代の手術シミュレータの礎をなることを期待する.