評価付けの重みを考慮した協調フィルタリング手法の提案と評価

川口 誠敬(0551037)


 現在主流となっている全文検索システム上では、ユーザが目的に合ったキーワードを見出せないことや、検索結果数が膨大であることから、ユーザの嗜好に合った情報収集が困難になりつつある。 そこで目的に特化した検索サービスが提供されている。このサービスはユーザが求めている対象の一般的に公開されている情報を得ることは可能だが、ユーザの嗜好に合うかという情報は提供されていない。なぜなら 嗜好情報は、同じ表現や同じ文章、また同じ数値であっても、解釈する人によって捉え方が異なるため、取り扱いが困難な情報である。
 このように、人の嗜好はバラつきがあり不安定な情報である。そのため、インターネット上に公開されている 飲食店に対する情報を検索した場合、どの情報がユーザにとって有用であるか、つまり嗜好に 合う情報かの判断が難しい。そこでユーザの嗜好を考慮した情報提供を行うものとして 情報フィルタリングが注目されている。これらは不安定な情報である嗜好情報を、情報フィルタリングの 技術である内容ベースフィルタリングや協調フィルタリングを利用することで嗜好に合った 情報提供を実現している。ユーザの明示的な評価の数値入力は最もユーザの嗜好判断に適用しやすい情報であり、これをフィルタリングに利用し、より嗜好に合った検索結果が得られる。しかし、数値入力された評価値をそのままの値で利用しているため、ユーザがつけた本来の評価付けの重みが考慮されていない。 そこで本研究では、ある対象に対して評価付けを行ったユーザの評価分布を利用して評価基準を決定する。評価基準とは、ユーザにとって評価の良し悪しを決定する基準点である。評価基準を用いることでユーザが評価付けした値に本来の重み付けが可能となる。ユーザ間の嗜好のズレを考慮し、嗜好に合った情報提供システムを提案する。提案手法に基づいて協調フィルタリングを活用した情報推薦システムを実装・評価した結果、既存技術より少ない誤り数でユーザの嗜好に合った情報を推薦することができた。