輝度値の変化と画像の局所性を考慮したパターン類似度に基づくエネルギー最小化による画像修復

河合紀彦 (0551036)


写真についた傷などの画像内の不要な部分を取り除き,その欠損領域を自動的 に修復する画像修復に関する研究が近年盛んに行われている.従来,欠損領域の 修復に関しては,パターン類似度SSD (Sum of Squared Differences) を用いて欠 損領域全体の尤もらしさを表す目的関数を定義し,それを最適化することで画像 を修復する手法が提案されてきた.しかし,画像上における同一構造物体の輝度 値の変化を考慮していないため,修復画像に輝度値の不自然な変化が発生し違和 感が生じる場合がある.また,パターン類似度SSDによる評価尺度はパターン の変形に比較的弱いため,画像上でテクスチャが幾何学的に大きく変化する場合に は,不適切なウインドウの対応を招き,修復画像がぼけてしまう.
そこで,本論 文ではテクスチャの輝度値の変化を考慮したパターン類似度と画像の局所性を考 慮したエネルギー関数を新たに定義し,これを最小化することで,高品位に欠損 領域を修復する手法を提案する.本研究では,輝度値の変化を考慮したパターン 類似度を用いることで,輝度値の不自然な変化を抑止する.また,テクスチャパ ターンの局所性を考慮することで,不適切なウインドウの対応付けを防ぎ,ぼけ の発生を抑える.実験では,様々な画像に対して欠損領域の修復を行い,従来手 法との比較および主観的評価実験を行うことで提案手法の有効性を示す.