fMRI信号を用いた視覚像の再構成

内田 肇 (0551018)


脳が感覚・運動・想像などの情報を符号化していると仮定し,脳活動から情報を読み取ることで脳の情報表現・情報処理過程を調べる復号化という方法がある.近年では非侵襲計測である機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)においても用いられ,ヒトの脳活動信号から見ている線分の傾きやランダムドットの動き方向など視知覚のパラメータが復号化されている.しかし,基本的には1つのパラメータを復号化しているため任意の画像を復号化することはできていない.そこで,本論文ではヒトの視知覚世界を2次元画像として脳の外に取り出すことを目的とし,眼への入力情報(提示画像)を脳活動(fMRI信号)から再構成する手法について述べる.

fMRI信号から画像の局所特性を推定する復号器(局所特性復号器)を複数用意し,これら局所特性復号器を統合することで2次元画像の再構成を行う画像復号器を作成した.最初に,局所特性復号器の出力が画像の基底の係数であるとして統合することを行った.次に,提示画像からfMRI信号への生成モデルを仮定し,ベイズ推定による事後分布を求める形で局所特性復号器を統合することを行った.ベイズ推定による統合の場合,局所特性復号器は生成モデルの隠れ変数を推定していると考えた.これらの手法により,任意の2次元画像の再構成が可能であることがわかった. 複数の復号器を組み合わせ,従来よりも複雑な情報を復号化できることで脳の情報表現・情報処理過程の更なる解明が期待される