車載HMIがドライバの緊急回避行動に与える影響の評価

植松 亨介 (0551017)


車載表示・操作装置は,自動車へのIT技術の普及とともに複雑化してきており,ドライバの脇見運転や注意力散漫を誘発することが指摘されている.車載Human-machine interface (HMI)操作が運転行動に及ぼす影響に言及した先行研究が多々行われているが,現実的な運転環境において,緊急回避行動が求められるような状況下でのHMI評価実験は十分に行われていない.

本研究では,HMI操作が危険回避行動にもたらす影響を評価する手法の確立を目標として,ドライビングシミュレータを用いた車載HMI評価実験を行った.運転中のドライバが車載HMIを操作する際に,先行車の急減速や故障車の出現,横風発生などの被験者が予期しないイベントを発生させた.評価対象HMIとして,Head-up display (HUD)とステアリングスイッチを組み合わせた新しいHMI,および従来型のインパネHMIを使用した.

実験の結果,新しいHMIは従来のHMIと比較して認知・反応時間が短い傾向であることが確認されたが,HUD上の情報量増加に伴って認知・反応時間が増加する可能性があることが判明した.また,走行中のHMI注視やスイッチ操作は,危険事象に対する認知・反応時間を遅らせることを示す結果が得られた.本研究によって,運転中の車載HMI機器の操作が ドライバの緊急回避行動に影響を及ぼし,その度合いがHMIの種類によって異なることを明らかにした.本研究で扱った評価手法がHMI評価に有効であることが示された.