P2Pベース多人数参加型オンラインゲームを対象とした
ユーザの相互監視に基づく不正防止手法

居細工 高人 (0551006)


多人数参加RPG 型ネットワークゲームは,参加者の数が数十万人に及ぶもの もあり,混雑時のサーバの負荷が問題となる.P2P 技術を利用することで負荷分 散を行う手法が提案されているが,この場合,ユーザ端末に処理を委ねることに なり,ゲーム状態やパケットがユーザ端末により不正に利用・改ざんされる危険 性が高まる.これまで,P2P 方式でのMMORPG 向けの不正防止法が幾つか提 案されてきたが,ユーザ数に対するスケーラビリティが悪かったり,不正発生か ら検知までの時間が長いなどの問題があった.本研究では,これらの問題を解決 するため,スケーラビリティに優れ不正の検出時間の短い新しい不正防止手法を 提案する.提案手法では,イベントを配送する特別なノード(担当ノード)と, 担当ノードの不正を監視するノード(監視ノー ド)をユーザ端末から選出し,互いにゲーム状態に不整合が生じていないかを相 互監視させる方法を採用する.相互監視はユーザ端末同士が多数決を行うことで 実現され,多数決のための通信には,通信量削減のため状態そのものではなく状 態のハッシュを送り合う.提案手法を評価するため,不正発生から状態修正まで の時間と監視ノード導入によるオーバーヘッドを測定する実験をインターネット のWAN 環境で行った.実験結果から,提案手法では,不正発生から状態修正ま での時間が8 秒程度と実用上十分短く,不正によるゲーム進行への影響が低いこ とを確認した.