YlmFはFtsZと直接結合して分裂に関与する
平松 鉱之介 (0451136)
細菌の細胞分裂にはFtsZ、FtsA等の様々な因子が関わっており、それらは、タンパク質間の相互作用により分裂面に集合する。そこで、分裂初期におけるタンパク質相互作用を同定するために、FtsAのHis-Tag融合タンパク質を発現する枯草菌細胞をホルムアルデヒドで処理し、そこからFtsAを含むタンパク質複合体を精製した。質量分析計により特異的に精製されたタンパク質を決定したところ、FtsA、FtsZ、EzrAに加えてYlmFが同定された。ylmFは枯草菌ゲノム上でftsAZと15kbp離れた位置に存在するが、多くの近縁種でylmFのオルソログはftsAZとオペロン構造をとっている。さらに最近、ylmFはStreptococcus pneumoniaeやSynechococcus elongatusにおいて分裂に関わる因子であることが報告されている。これらのことからYlmFが枯草菌においても分裂に関わる因子である可能性が高いと考えた。
本研究ではこの可能性を確かめるためにYlmFの細胞内局在の観察、ylmF欠損の分裂への影響の解析、Yeast two-hybrid解析による分裂に関わるタンパクとの相互作用解析を行った。YFP-YlmFの細胞内局在を見たところ、分裂中の細胞でYlmFが細胞中央に局在することが観察された。またylmF欠損株では野生株に比べて細胞長が長くなる表現型が見られた。さらにYeast two-hybridの結果から、YlmFはFtsAではなく、FtsZと直接的に結合することが示された。こうした結果は、YlmFはFtsZと直接結合して分裂機能に関わっていることが示された。
FtsZはtublinホモログであり、それが重合して細胞中央でZリングを形成することにより、細胞分裂が始まる。これまでにFtsZに直接結合する事が分かっているタンパク質の中で、FtsA、ZipAはFtsZのC末端に結合してZリングの安定性に関与していると考えられている。FtsZにおけるYlmFの結合領域の決定は、分裂初期にFtsZで起こる分子メカニズムを解明するのに重要な情報となりうる。そこで、YlmFと相互作用しなくなる変異型FtsZをYeast-two hybrid解析によりスクリーニングした結果、一つの点変異が入った変異体が15種取れた。これら変異体を詳細に解析することで、FtsZとYlmFの相互作用の、細胞分裂における役割に関する新たな情報が得られると期待される。