Polypurine/polypyrimidine配列の比較ゲノム解析

田中 宏幸(0451134)


Polypurine/polypyrimidne配列(Polypu/py配列)は、分子内または分子間で3重 鎖構造(Triplex)を形成することが知られており、転写や複製等の制御機構との 関連が示唆されている。現在ゲノムプロジェクトの進展に伴い250種以上のバク テリアに加え、ヒトやマウスのような高等真核生物のゲノム配列が決定されて おり、多様な生物種間におけるゲノムレベルでの比較解析が可能となっている。 本研究では、これらゲノムデータを基にし、比較ゲノム解析により生物種間で のpolypu/py配列の出現頻度を理解し、更にpolypu/py配列がヒトゲノムの複製 タイミングに与える影響、及び遺伝子との関連性について解析を行った。その 結果、polypu/py配列(length>=300nt,A+G>=90%)は真正細菌には検出されず、 古細菌では2種、ヘルペスウイルスでは9種で検出された。これらの結果は古細菌 の複製機構が真核生物に近いこと。またヘルペスウイルスの複製機構がローリング サークル型である等、複製システムの違いを反映していると考えられる。 一方、高等真核生物では爆発的なpolypu/py配列の増加が認められ、ヒトでは 5800断片、マウスでは14400断片が検出された。またヒトにおいてpolypu/py配列 のゲノム上での累積プロットを行った結果、polypu/py配列はゲノム上で特徴的 な分布傾向を供ってゲノム全体に分布していることがわかった。特にセントロメアを 境界として、長腕、短腕で分布傾向が顕著に異なっていた。更にヒト染色体長 あたりの遺伝子数密度とpolypu/py配列長密度に正の相関が認められ、実際に 遺伝子領域で多数のpolypu/py配列が検出された。また、たんぱく質をコードする 側の鎖でpolypu/py配列が優先的に存在するストランドバイアスも認められた。 先天性の疾患遺伝子領域にpolypu/py配列が検出された他、膜たんぱく質などに多く 検出されており、これらの結果からpolypu/py配列は遺伝子発現の調節または多様性 を導く因子であることが示唆された。