複数経路上を歩行移動可能なテレプレゼンスシステムにおける違和感の低減に関する研究

和田 浩明 (0451126)


時間や場所に隔たりのある空間での事象を仮想環境内で再現し, あたかもその空間に居るかのような感覚を与えるテレプレゼンスと呼ばれる技術は,近年広く研究され, 娯楽,教育,医療などの分野へ応用が期待されている.

本研究の目的は,遠隔地における複数の経路上を歩行移動する感覚を再現するテレプレゼンスシステムの構築手法を確立することである.

本研究では,全方向型の歩行装置上において利用者の歩行移動量を検出及び相殺し, これに応じて全方位マルチカメラシステムにより取得された画像を没入型ディスプレイに提示することで, 歩行移動中の視界を再現する. このようなシステムでは,一般に利用者の仮想視点の移動範囲が動画像の撮影経路上に制限されるため, (1) 仮想環境中の進行可能な方向や異なる経路の交差位置を利用者が把握できずスムーズな移動が困難となる, (2) 利用者の歩行移動量と仮想視点移動量の不一致により臨場感が損なわれる, という2つの問題が生じる.

本研究では,撮影経路の把握の問題 (1) に対して, 経路の方向や交差位置といった経路情報を提示画像上に重畳表示し,利用者を移動可能な方向に誘導することで解決を図る. 移動量の不一致の問題 (2) に関しては, 違和感の少ない仮想視点位置の決定手法を実験的に明らかにし,これを用いる.

発表では,これらの提案手法についてまとめ, 違和感の低減手法を利用して構築したプロトタイプシステムを用いた被験者実験による評価結果を示す.