多人数参加型オンラインロールプレイングゲームにおける負荷分散および遅延時間を考慮したイベント配送方式の提案
山本 眞也 (0451122)
近年,多人数参加型オンラインロールプレイングゲーム(以下,MMORPG)
が注目を集めている.サーバレスのP2P 環境でをMMORPG を実現する方法と
して,ゲームで発生するイベントの登録通知をゲーム領域の分割によってできた
部分領域ごとにゲーム参加者の計算機に担当させる方式が提案されている.しか
し,各領域のプレイヤ数が増加すると,担当計算機の負荷が高くなるという問題
があった.この問題に対し,部分領域が混雑した際にも担当計算機の負荷が高く
ならないように,混雑状況に応じて,イベント配送を,複数の計算機により動的
に構成した配送木やオーバレイマルチキャストを用いて行う方法が提案されてい
る.しかし,これら既存の方法では,イベントがゲーム参加者の計算機に到達す
るまでP2P ネットワーク上の幾つかの計算機を介するため,配送遅延が問題にな
る.本研究では,P2P 環境でMMORPG を実現するためのイベント配送機構と
して,ゲームのある部分領域の混雑状況に応じて,複数の計算機による配送木を
動的に構築することで負荷分散を計るとともに,配送木上のノードを順次入れ替
えていくことにより,エンド・エンドのイベント配送遅延を徐々に短縮する方法
を提案する.また,従来研究において対処がされていなかった,複数の部分領域
に跨るプレイヤの視野範囲が移動していく際の効率の良いイベント配送制御法を
提案する.LAN 環境で動作するプロトタイプシステムによる実験と,ns-2 によ
るシミュレーション実験,PlanetLab 上でのプロトタイプシステムを用いた実験
を行い,提案手法が現実のネットワークゲームを実現する上で,実用的な性能を
達成できることを確認した.