初期状態オブザーバを用いた移動体の自己位置推定法

樋口 宗明 (0451099)


移動体が現在どの場所にいてどの方向を向いているかを推定する自己位置推定は移動体を利用する上で重要な技術である.移動体の自己位置推定は大別するとデッドレコニングとスターレコニングの2種類に分類される.一般的にデッドレコニングは横滑りのような外乱に弱く,計測誤差が移動距離に応じて増大して行くといった問題があり,一方,スターレコニングは計測周期が長く,計測値の分散が大きいといった問題がある.このような欠点を克服するため,これらの手法を組み合わせて用いるセンサフュージョンに関する研究が盛んに行われており,代表的な手法として拡張Kalmanフィルタが用いられている.しかし,拡張Kalmanフィルタは各手法に生じる誤差をモデル化する必要があるため,実装に手間がかかるといった問題がある.このような問題を克服するため,本研究では誤差モデルを必要としないセンサフュージョン手法を提案する.提案手法はデッドレコニングおよびスターレコニングの計測値から移動体の初期状態を推定する初期状態オブザーバを用いることによってデッドレコニングの誤差を補正する手法である.本研究で提案する手法は誤差モデルを求める必要がないため,拡張Kalmanフィルタと比べて実装が容易であり,デッドレコニングの計測周期とスターレコニングの計測周期が異なるマルチサンプリングレート問題を考慮する際にも容易に実装ができるという特徴を持つ.本研究では初期状態オブザーバを用いた自己位置推定法について述べ,シミュレーション,実機実験により,提案手法の有効性を検証する.